千葉県館山市、南房総の沖ノ島でシュノーケリングをする際の時期とシュノーケル・ポイントについて
千葉県の南房総と呼ばれる地域にある館山市には沖ノ島という素晴らしいシュノーケリング・ダイビングスポットがあります。子供も一緒にあそべるほど波は穏やかで水深も比較的浅く、千葉県において最上級クラスと言っていいほどの美しい海だと思います。
東京湾の入り口にあたりますが、水中の写真だけ見ればここが東京湾の中にあるとはにわかには信じがたいかもしれません。
これは千葉の南房総は黒潮と呼ばれる温かい海の流れの影響を強くうけているからです。
黒潮はフィリピンあたりから始まり、沖縄、九州、四国、紀伊半島、伊豆諸島、そして房総半島あたりで、北からやってくる寒流である千島海流(親潮とも呼ばれる)とぶつかり東へと流れていきます。
黒潮の特徴は、貧栄養でプランクトンが少なく、透明度が高く、水温も高い。
そのため温かい海にすむ色とりどりの熱帯魚などの魚が舞い、直径1mを超すサンゴまで生息しており、さらに地形の面白さもあります。
また、鏡ヶ浦と呼ばれるほど、波は静かで穏やかで、シュノーケリングをするには安全な条件がそろっています。
ですが、環境はその時々で変化します。十分経験を積んで状況判断ができるようになってから楽しんでください。
初心者や子供が一緒の場合は、はじめにシュノーケリングを学べる体験プログラムへのご参加をおすすめします。海辺の鑑定団では、シュノーケリングの基礎をすべて実際に練習しながら観察も同時に行うことができる体験ツアーがあります。小学校一年生から体験が可能です。
ではさっそく、館山市の沖ノ島のシュノーケリングガイドで10年の間沖ノ島で毎年潜り続けている(一年のうち夏の期間で沖ノ島で海に潜る回数は70回以上)、わたくし、たこやき@海辺の鑑定団が千葉における最高のシュノーケリングスポットについてご案内いたしましょう。
沖ノ島シュノーケリングポイントA:砂地
この地帯は3,4年前まではアマモが繁茂していました。
しかしそれも今は昔。
いまはほとんど砂地になってしまっています。
食害にあっているアマモを探すのもいいでしょう。
私達、たてやま・海辺の鑑定団が移植をしているアマモも発見できるかもしれません。
夏の海水浴場の設置期間には、このあたりにブイが浮かんでいます。その場所の下にはアマモが移植されていますので観察してみてください。
アマモはアオリイカの産卵場所になったり、小魚や小さな甲殻類が棲んで、”うみのゆりかご”と呼ばれるくらい海の生物たちにとっての楽園なのです。
上の写真のようなガザミが埋まっていたり、ヒラメ、舌平目、キス、ハゼなど、砂地が好きな生き物が観察できます。たまに、ホウボウやオジサンといった、砂地でエサを探している魚も発見できるでしょう。また、ボラやクロダイといった魚もうろうろしているのを見かけます。
さらにここには「ブンブク」というめずらしいウニが生息していて、生きて動いているものもいれば、砂地の上に死んでしまったあとの殻が落ちています。殻は非常にもろくなかなかビーチコーミングではひろえないものになります。
砂地の中にちょっとしたくぼみや、岩が埋まっている場所をよく見てみると、
こんなタコがこっそり隠れている場合もあるかもしれませんよ。
沖ノ島シュノーケリングポイントB:テトラ周辺
護岸のテトラポッドは海の生き物にとって、格好の隠れ場所となっています。
写真は、このあたりではイソッピと呼ばれるショウジンガニと、暗い場所を好むネンブツダイの群れ。隠れる場所の多いこの場所のすきまには、さまざまな種類の海の生きものを観察することができるでしょう。
そのほかには、メバル、タカノハダイ、ハゼ、ハオコゼ、ゴンズイなどを発見できるでしょう。
このあたりは釣り人が多い場所です。投釣りをしている場合などは近づかないほうがいいでしょう。
また、波のある状況のときにはテトラポッドへ体をぶつけてしまう可能性がありますので、そのときにも近づかないようにしたほうがよいでしょう。
こういった状況判断は本当に重要ですので、シュノーケリングをする場所の選定と時間は何よりも大切なのです。
実は少し浅いところの岩場の影に、頑張って生きようとしているキクメイシの仲間と思われるサンゴが成長しつつあります。砂地が近いため砂がかぶりやすく、しかもまだまだ小さいですが、ぜひ頑張って大きくなってほしいと願っています。
沖ノ島シュノーケリングポイントC:海水浴場のブイ
ブイによりそうオヤビッチャ イシダイの子供 ブイにもシマダイ君 ブイ好きイシダイの子供 そっと近づいてみて
夏の海水浴の期間中(7月中旬~8月20日頃まで)、この場所あたりに数個のブイが設置されます。じつは、このブイがスノーケル・ポイントになります。
魚たちも、なにもないところを泳ぐのは不安らしく、何かにすがっていたいもののようです。
特にこの写真に写っている、イシダイの子どもはブイが好き。
何かに寄り添っていたい気持ちが強い魚で、人がゆっくり近づいても逃げるどころか近づいてきて寄り添ってきます(笑
もし見つけたら捕まえようとしたりせず、じっくり観察してみてください。
また、ブイ近くには、アオリイカの子どもたちが群れている場合もあります。こちらもそっと近づけば急いで逃げません。じっくり色の変化などを見せてくれることもありますので、静かに観察しましょう。
ほかに、ギンポ、オヤビッチャなどもついていることが多いです。
また、一度だけですがミノカサゴも見たことがあります。
また、巨大なイワシの群れがざぁっ!と通ることがあります。これを見ることができたらとても感動しますよ。
沖ノ島シュノーケリングポイントD:石がゴロゴロしている浅いところ
夏の最盛期になると見られる嬉しい魚と言えば、青いソラスズメダイ。小さな群れから大きな群れまでいくらみていても飽きません。このソラスズメダイは黒潮の影響で館山湾まで流れてきて暮らしているのですが、冬寒くなると死んでしまうものが多く冬場でみることはあまりできません。こういう魚のことを死滅回遊魚と言ったりします。
もう一枚の写真は岩陰でこっそり獲物を狙っているカサゴ。岩にじっとしているので見つけるのも苦労するかもしれませんが、慣れたらすぐにわかります。このあたりで見られる比較的大きめの魚です。
このあたりの海域はとにかく魚の種類が多いです。
ベラの仲間、ホンソメワケベラ、カゴカキダイ、メジナ、タカノハダイ、オヤビッチャ、チャガラ、イワシの群れ、サヨリ、メバル、クサフグ、ハコフグ、カワハギ、ヤガラの仲間、ボラ、ゴンズイの群れなどを見ることができるでしょう。
タカノハダイ 水面近くを通るボラ ハコフグ ゴンズイのむれ カゴカキダイ
運が良ければ、チョウチョウウオも見られるかもしれません。
魚だけでなく、ムラサキウニやバフンウニなどウニの仲間もたくさんいます。しかし漁業権が設定されていますので、もし取って食べたりしてしまうと、3年以下の懲役200万円以下の罰金に処せられますのでご注意を。
干潮時、転がっている石の下を覗いてみると、クモヒトデの仲間がたくさんみつかるでしょう。生きているタカラガイの仲間や、ナマコの仲間、オニヤドカリなども同様に発見できます。
クモヒトデ 生きているタカラガイ
沖ノ島シュノーケリングポイントE:傾斜のある岩場地帯
満潮になると少し深くなりますが、干潮だと水深1m程度の場所で見ることができる大きなサンゴがこのあたりに点在しています。
キクメイシ おおきなイボサンゴのなかま カサゴとサンゴ エダミドリイシの群生 増えているテーブルサンゴ ついたばかりのサンゴ イボサンゴ
僕は毎年潜っていますが、年々大きくなっているように思います。また、そのサンゴの数も増えています。
サンゴは骨格をもったイソギンチャクの仲間で、暖かい静かな海に生息します。そしてこの館山湾にあるサンゴは日本における最北端にあるサンゴなのです。
これは黒潮の影響が房総半島あたりまでであることと関係があります。
イボサンゴ、トゲイボサンゴ、キクメイシ、テーブルサンゴ、エダミドリイシなどの種類がいます。
2017年10月に沖ノ島を襲った台風の影響で、トゲイボサンゴがまるごと3mほど陸側へ移動してしまいました。岩盤ごと動いているので、いまは浮いた状態になっているわけですがこのあとどう成長するのか見守りたいと思います。
また、サンゴイソギンチャクもいくつか点在していて、年によってはここにクマノミが入って生活することがあります。運が良ければ見ることができるかもしれません。ミツボシクロスズメダイも同様に入ることがあります。
クマノミ ミツボシクロスズメダイ
近くでトゲチョウチョウウオの幼魚も発見しました。
沖ノ島シュノーケリングポイントF:起伏にとんだ岩場地帯
海藻が生えていたり、地形に起伏のある場所でこのあたりでもサンゴや魚やその他の生き物を観察することができます。
写真のようなツノダシも夏の最盛期には出現します。なぜかこの周辺でツノダシが泳いでいることが多く、よく見ますので見たい方はこのあたりがおすすめです。(スノーケルポイントEでも見られます)
ニホンアワサンゴという、珍しいサンゴもこのあたりに生息しています。
注意点として、このあたりには海中観光船たてやま号という、観光の船が近くまでやってくることがあります。近づくと危ないのでピンク色の船がやってきたら離れるようにしましょう。
沖ノ島シュノーケリングポイントG:岩場と砂地が合わさる場所
沖ノ島の南側の海域には浅い場所の岩場の先へ進むと砂地が広がっています。
その砂地にこっそり潜んでいるのが、この生き物。
名前はスカシカシパンウニといいます。
本来はこのように茶色い肌をむきだしておらず、砂をうまくかぶっていてぱっと見ではよく見えません。ですがよくよく観察してみて砂がこんもりもりあがっていたら、このウニがいる証拠です。裏返してみると、ちゃんと口と肛門があるのが確認できます。
この砂地の場所では、ボラ、いわしの群れ、キス、ハゼなどが見られるでしょう。胸ヒレのきれいなホウボウが歩いているのも見たことがあります。
岩場の場所にはカゴカキダイが多く、運が良ければ背中のブルーのラインが美しいミヤコキセンスズメダイもいます。また、さらに運が良ければ、タツノオトシゴも発見できるかもしれません。
メジナの子どもの群れもたくさんいます。
サンゴも増えてきており、小さいものから結構大きなものまで浅い場所で見つけることができるでしょう。キクメイシ、キクメイシモドキが主なサンゴです。
また、浅い場所の岩場にはこのような海藻が生い茂っている場所がありますが、その中を良く探してみるとこのようなアオリイカの卵を発見できるかもしれません。
館山・沖ノ島でのシュノーケリングの時期はいつが良いか?
千葉県の中では有数のスノーケルポイントである館山湾の沖ノ島でのシュノーケリングをする最もいい時期は、やはり夏です。
海の夏は一ヶ月遅れで来ます。ですので個人的には9月をおすすめしますが、これだと夏休みが終わってからということになってしまいます・・・。
海水浴シーズンがMAXになるのはお盆の時期ですが、それを過ぎたくらいからはさらに魚が増えてきますのでこのあたりがいいかもしれません。
7月も後半に入るとかなり海が騒がしくなってきます。黒潮に乗ってたくさんのカラフルな魚たちがやってくるのです。
黒潮の影響が強い年では、7月中旬からでもソラスズメがたくさん泳いでいたり、すでに夏の様相になっていることもありますので十分楽しめるでしょう。ただし少しまだ水温が低いことがありますのでできれば子どもたちはウェットスーツ着用をオススメしています。(海辺の鑑定団にはウェットスーツの貸出もあります)大人は我慢できても、子どもたちはやはり寒くなってしまうとテンションが落ちますからね。
そうそう、8月中旬ごろから、アンドンクラゲが結構発生します。
長袖長ズボンは必須です。特に波打ち際から少し海に入ったあたりにたくさん集合していたりすることがありますので十分ご注意ください。
ですが、アンドンクラゲがでてきてようやく、海の中に夏が来たなあ!と僕は感じます。
そう、アンドンクラゲがでてくるころ、水温は最も高く、沖ノ島の海は本当の夏を迎えるのです。海水浴の方はだいたいこのお盆を過ぎると海に入るのをやめてしまいます。
本当にもったいない!
海の中をシュノーケルをつけてのぞいてみてください。夏がこれからということに気づくでしょう。
ちなみに、電気クラゲという別名を持つ危険な生物カツオノエボシも打ち上がっていることがあります。僕が発見したのは比較的小さめですが、二匹ほど打ち上がっていました。死んでいても毒針は効果を発揮します。絶対に触らないこと。カツオノエボシの写真はもう少しあとでご紹介しましょう。
館山市の沖ノ島の透明度について
あくまで僕の感覚ですが、夏の期間のトータルで平均すると海の透明度は5~10mほどではないかと思います。
海の透明度はいつが良いとは言えません。これはかなりランダムで予測も非常に難しいです。すばらしく透明度が高いときは15mくらい先まで見えることすらあるのですが、台風のあとなど海がかき混ぜられたあとなどは残念ながら伸ばした手の先まで見えないことも・・・。
でも、すべての場所が統一の透明度というわけではなく、沖ノ島のある場所は透明度が高く、ある場所は低いということもあります。海辺の鑑定団のシュノーケリング体験ツアーでは、できるだけ透明度の高い場所をご案内します。
しかし、こればかりはなんともしようがなく、運になってしまいますね。
シュノーケリングについて気をつけること5つ
装備をちゃんとそろえ使用方法を学ぶこと
安全のためにマスク、スノーケル、フィン、浮力(ライフジャケット等)の使い方をきちんと学び、ちゃんとつけましょう。特にフィンをしないで潜る方がいらっしゃいますが、海の流れが急に変わったり、沖に急速に流れる離岸流などがある場合、危険が増します。また、スノーケリングにライフジャケットは必須です。
状況判断をしっかりすること
波の状況、海流の状況、風の状況、潜っていい場所かどうか、この判断がとても重要です。この判断が最も命を守ることにつながっているといっても過言ではありません。
十分注意してください。
海辺の鑑定団主催のシュノーケリング体験プログラムでは経験豊富なスタッフがその時々の状況に応じて、ご案内する場所を替えています。これは安全への配慮の最も重要なポイントだからです。ですので、予定された場所へご案内できないことがあることをご了承くださいませ。
スキルアップをはかること
海辺の鑑定団主催のシュノーケリング体験プログラムでは、マスクの使い方、マスククリア、スノーケルクリア、フィンの使い方、すべてやっていただき、知っていただき、そしてはじめて観察の時間が始まります。(もちろん練習中でも魚は見られちゃいます)
これらの技能は実際にシュノーケリングを続けるうえで、あなたを守る強い味方になるでしょう。
バディシステムを守ること
海には必ず、ひとりでは入らず、二人で入りましょう。お互いがお互いを確認しあうことで、安全が確保されます。何かトラブルがあっても対処がしやすく、また、危険も回避できることが多いです。さらに大きなメリットとして、何か面白いものを発見したとき、隣に誰かがいて一緒に喜んだほうが楽しいです(笑
危険生物を知ろう
沖ノ島にも危険な生物はいます。毒を持っているものや、針がするどいもの、刺激の強いクラゲの仲間などは、知っていればそれを避けることができます。私たちがシュノーケリングの講習の際に危険ですよとお知らせしているのは、ハオコゼ、ゴンズイ、ガンガゼ、ウミケムシ、アンドンクラゲ、カツオノエボシ(特に危険)、ヒョウモンダコ(特に危険)です。
じっさいに、どれも沖ノ島で存在が確認されています。ぜひご注意ください。
シュノーケリング体験プログラムへ参加しませんか?
海辺の鑑定団主催のシュノーケリング体験プログラムは初めての方でも安心して学び、楽しむことができます。
毎年1000人近くの方に楽しいシュノーケリングを体験していただき、好評を得ています。
ぜひ、一緒にシュノーケリングを楽しみましょう!
千葉県館山市の沖ノ島であなたをお待ちしています!
追記:沖ノ島で起きるシュノーケリングの事故について
2018年、残念ながら、沖ノ島で水難事故が起きてしまいました。報道ではシュノーケリング中ということになっています。
ニュースなどでシュノーケリングの水難事故について聞くと、シュノーケリングが危険すぎるものなのではないかと誤解を生んでしまうことを危惧します。ですので、沖ノ島で水難事故が起きた原因について私が警察の方などに聞いたことをここでお伝えしておきたいと思います。
まず言って置かなければならないこととして、報道でシュノーケリングとされているものは、スキンダイビングの誤りです。シュノーケリングは海の表層・浅瀬で楽しむものです。スキンダイビングは、いわゆる素潜りというもので、別のアクティビティになります。
そして、沖ノ島で起きているほとんどの水難事故は、シュノーケリングではなく、スキンダイビングなのです。
沖ノ島で起きた水難事故の原因とされるもの
●お酒を飲んでいた。
●装備が不完全(フィンを装着していない・ライフジャケットや浮力がないなど)
●漁師が海の底に仕掛けてある網に引っかかってしまった(素潜り)
●遊泳禁止区域でのシュノーケリング
※沖ノ島の西側の海岸は、赤い旗が立てられて遊泳禁止区域とされています。(沖ノ島のポイントを示した写真を見返してください。なんのマークもついていません!)流れが早かったり潮流が沖へでていたりすることもあり、大変危険ですので、遊泳禁止区域ではシュノーケリングはもちろん、遊泳してはいけません。
ぜひ、安全にシュノーケリングを楽しんでくださいね!