千葉県館山市の沖ノ島について
沖ノ島(沖ノ島公園)は、千葉県の南に位置する南房総館山湾の南側に位置する高さ12.8m、面積約4.6ha周囲約1kmの陸続きの小島(陸繋島)です。
南房総国定公園内のこの島は約8000年前の縄文海中遺跡や世界的に注目されている北限域のサンゴを育む貴重な自然が残る無人島なのです。
沖ノ島をぐるっと探検してみましょう。
今まで知らなかった、気づかなかった自然の営みや、綺麗な貝殻との出会いはきっと新しい海辺の楽しみを発見させてくれるでしょう。
豊かな生態の育む海の生き物や、海から繋がる森、打ちあがるたくさんの貝殻・・・・・・
館山沖ノ島は、自然や歴史から感じたり、学んだり、楽しむことが出来る素晴らしいフィールドです。
館山市の沖ノ島の場所
千葉県館山市の市街地より南西方向、自衛隊基地の裏側に沖ノ島があります。
➜館山自動車道終点から、車で約20分
➜館山駅東口で日東バス「館山航空隊」ゆきに乗車し終点下車。徒歩約20分
➜館山駅西口よりタクシーで約10分(平常時)標準料金は1,500円程度
沖ノ島の島内の地図
沖ノ島の島内には様々な不思議が詰まっています。そのいくつかをこれからご紹介していきましょう。
沖ノ島は陸続きの島(陸繋島)
何故沖ノ島は、陸続きになったのでしょうか?
それは、そんな昔の話ではありません。
明治の頃は、館山の沖ノ島と、その手前の高ノ島は、それぞれ海を隔てた島でした。現在は、高ノ島は、陸地に取り込まれ、沖ノ島は、陸地と繋がった島になっています。
まず、房総半島は、有史以来「隆起」を続けている地域と言われています。地層から海底1000m以深に生息する貝の化石(シロウリガイ)が出てくる場所もあります。(少なくとも1000mは隆起?)
沖ノ島が、陸続きなった理由の一つは、その「隆起」です。隆起の原因は、主に地殻変動「地震」です。
最近房総半島を直接襲った大きな地震は、関東大震災を引き起こした1923年(大正12年)の地震です。そのときの隆起は、2m近くであったと言われています。
その後、館山海軍航空隊の基地(現在の海上自衛隊基地)が埋め立てられ、高ノ島はその一部となりました。沖ノ島も陸地と近くなり、浅くなった海に砂が集まるようになりました。そして、昭和の時代を迎え陸地と繋がっていったのです。
※隆起とは、地殻変動などで地面が海面より高度を増すことです。
多様な海岸と生き物
沖ノ島の海岸にはたくさんの表情があります。
白い砂浜では、様々な色と形の貝殻を見つけることができます。特に陶磁器のようなつややかさと光沢をもつタカラガイは南房総で約50種類いるといわれています。
また、ごつごつとした岩場では、そこで暮らす小さな貝やイソギンチャク、フジツボ、カイメンが生きていますし、岩場のちいさな潮だまり(タイドプール)の中には小魚の群れが泳いでいます。
さらに、大小の石が波に洗われている岩浜の波打ち際では、その石をすこし持ち上げてみると巻貝やヤドカリ、イソガニ、ウミウシ、エビなどがすぐに見つけられます。
タカラガイ
タカラガイは、日本には88種類生息していることが知られています。主に暖かい海域に多く生息しています。日本でも南にいくほど分布が多くなっているのです。房総半島は黒潮(暖流)の影響が強く、前述のとおり、約50種類のタカラガイの打ち上げが確認されています。タカラガイの収集は、ビーチコーミングをする方たちの間でも人気です。中にはなかなか見つからない珍しい種類(レアーな貝)もあるからです。
珍しいタカラガイの一例 キムスメダカラ クロハラダカラ アジロダカラなど。
タカラガイの種類のキイロダカラは、今から3000年前の貨幣(お金)として使われた貝と言われ、漢字の「貝」と言う字の元になったとも言われています。だから、お金に関係する漢字には「貝」を使った字が多いのです。(財・貨・買・貯・貸・質・賃などなど)
暖かい海の海岸に打ちあがるタカラガイ、海に行って見つけてみよう。
※ビーチコーミングとは、海岸に打ち上げられた漂流物を観察したり、拾い集めて、楽しみ
ながら、海岸を散歩すること。
沖ノ島遺跡
【沖ノ島遺跡】です。
それは、昔最後の氷河期が終わった頃・・・・今から8000年~10000年前のお話です。
その頃の人たちの生活も海の恵みで支えられていました。
沖ノ島に住んでいた縄文人は「イルカ」を獲って暮らしていました。昔はイルカがたくさんいたのでしょうね。
イルカの化石とともに、石包丁として使われる黒曜石も発見されています。
イルカの耳の骨
南房総・館山周辺の海岸でビーチコーミングをしていると、時々発見される。いわゆる「お宝」です。もちろん沖ノ島でも見つかります。「イルカの耳の骨」は、硬い骨で、化石になっているものも見つかります。ビーコーミングを楽しむ方々には、人気の打ち上げ物です。どうして、沖ノ島や館山の海岸で見つかるのかはよく解っていませんが、縄文時代の遺跡も関係しているのかもしれません。
南房総・館山の海からの贈り物「イルカの耳の骨」を探してみましょう。海岸を歩けば、出会えるチャンスは、誰にでもあるのです。
サンゴと魚たち
海の中には東京湾とは思えない世界が広がっています。
日本の南岸を流れる暖流【黒潮】の影響を受ける沖ノ島には、南の島で見られるような生物を観察することができます。
たとえば、浅い海をすこし探せばキクメイシ、ニホンアワサンゴ、エダミドリイシ、イボサンゴ、トゲイボサンゴなど、日本における北限域のサンゴを発見できるでしょう。
さらに夏には真っ青なソラスズメダイやツノダシ、クマノミ、オヤビッチャ、カゴカキダイなどの温かい海に棲む魚たちを見ることができます。
沖ノ島のサンゴ
南房総・館山エリアの海域は、黒潮(暖流)の影響を受け北限域のサンゴが生息しているのは、前述の通りですが、沖ノ島のサンゴは、同じ館山の海域と比べ、浅いところに生息しているようです。何故なのでしょう。
理由ははっきり解りません。あくまでも予想ですが、沖ノ島が人の影響の少ないところに位置していることが一つの理由かもしれません。(沖ノ島の周りには住宅地もなく、川や生活廃水の流れ込みは少ないのです。)
海辺の鑑定団では、シュノーケリングを楽しめる体験プログラムがあります。
沖ノ島でのシュノーケリングのポイントはこちら
地層
沖ノ島は、もともとは、海底であった昔の地層が、長い時間をかけて隆起し、今は、陸地になりました。
洞穴(洞窟)
沖ノ島には、洞穴(洞窟)が結構あります。自然に出来た洞穴ではありません。
それは、縄文人が…。いや、違います。
沖ノ島の洞穴は、誰が掘ったのでしょう?
それは、昭和のはじめ、日本が戦争をしていた頃の遺構なのです。当時、南房総館山は、東京湾の入り口に位置する為、軍事的に重要な場所だったのです。沖ノ島も見張りの場所として使われていたようです。そのとき洞穴が掘られたのです。
その洞穴も戦争遺跡と言うことが出来ます。(入れない洞穴がほとんどですので注意が必要です)
沼サンゴ
南房総・館山エリアでは、6000年前の地層から、サンゴの化石が出てきます。6000年前?そう、縄文時代です。沖ノ島遺跡より新しい?その時代に何があったか?
「縄文海進」と言う出来事です。縄文海進とは、今から19000年前に始まった寒冷な氷期の後の温暖化による海水面の上昇です。6000年前がピークだったそうです。その頃は今より海水面が2~3m高かったのです。今よりも更に温暖だった南房総には、約100種類ものサンゴが生息し、サンゴ礁が形成されました。現在は、海水面の低下と更に数々の隆起を経て、標高約20mのところからサンゴの化石が見つかっています。館山市沼から出土したサンゴ化石を中心に、その実態が研修された為、その時代のサンゴ化石が「沼サンゴ」または、その地層が「沼サンゴ層」と呼ばれています。
自然の森と2019年の台風
砂浜から少し中へ入るだけでうっそうと草木が生い茂る自然の森があります。
枝葉が空を覆うように伸びているため、昼でも薄暗く感じるほどです。
タブノキや、シロダモ、マサキ、ヤブニッケイ、ウラシマソウ、フウトウカズラなどの暖温帯の植物を、海浜植物も含め約240種類確認し、観察することができます。
沖ノ島の守り神「宇賀明神」のご神木になっている推定樹齢300年の巨木であるタブノキは高さが18mもありました。しかし・・・
2019年の台風15号
房総半島に大きな台風がやってきて、沖ノ島の木々の多くが倒されてしまいました。この御神木であったタブノキも倒れてしまいました。
私達は、台風で被害があった森の再生に取り組んでいます。
宇賀明神
宇賀明神は嘉保3年~康和元年(1096年~1099年)に掛けて安房國司として赴任した「源親元(みなもとのちかもと)」が安房國の発展を願い、嘉保3年(1096年)、倉稲塊命(うかのみたまのみこと)を歓請し、鷹ノ島の弁財天と共に建立したとされています。倉稲塊命は五穀を司る神として平安時代以降、絶えること無く人々の厚い信仰を受けてきた、あらゆる産業の神と言われています。
説によると「宇賀」は「なが」とおなじとされ、「なが」とは「蛇」のことであり「宇賀」は「白い蛇」とも言われているそうです。
沖ノ島の海浜植物
沖ノ島は、岩場も砂地もある変化に富んだ地形です。そこには、南房総の海浜植物の多くが見つかります。さらに、種類によっては沖ノ島が数少ない分布エリアである海岸植物も見つけることが出来ます。
たとえば、マメ科の植物のハマナタマメや、カンナ科のダンドクなどは、房総でも沖ノ島が数少ない分布エリアと言われています。
そのほかにも数多くの海浜植物が四季折々に見られます。探してみましょう。
沖ノ島にいる不思議な虫
沖ノ島には、海辺でありながら森があります。夏は、小さい島の中の森の中もセミたちの声が響いています。蝶の仲間やクワガタ類なども見かけることがあります。暖かい季節にはたくさんの昆虫を見ることが出来ます。冬、多くの虫たちは、姿が見えなくなります。ところが、暖かい場所の常緑樹(ヤブツバキ、シロダモなど)の裏側に… じっとしている虫がいます。オオキンカメムシです。このカメムシは、南方系の虫で、成虫で冬を越す仲間です。越冬の北限が房総半島南部と言われています。冬の沖ノ島で探して見ましょう
まだまだ、沖ノ島にはたくさんの不思議や発見があります。実際に、見たり、聞いたり、触ったり、時には、嗅いだり、味わったり…五感で楽しみながら沖ノ島を回ってみましょう。
海辺の鑑定団には、沖ノ島を一周ぐるりと回って自然を体験するプログラムがあります。
沖ノ島を利用するにあたっての注意点とマナー
最近では沖ノ島が有名になり、多くの方が来られる観光スポットになっています。
一方で守られないマナーなどが問題になっています。
館山市の関係団体が「沖ノ島について考える検討会議」を開催しルールとマナーの啓発を話し合っています。
沖ノ島での海水浴について
毎年、海水浴シーズンになると多くの観光客で賑わう島になりました。ここでご紹介するのは通常の沖ノ島海水浴場についての情報です。毎年少しづつ変更もありますのでご参考までに御覧ください。
上記のように、魅力ある自然が多く残る島ですからぜひ多くの方に楽しんでいただきたいと思っています。
海水浴期間には、ライフセーバーも常駐し、海の家もたち、安心して海を満喫できるでしょう。
しかし、問題も発生しています。
日が暮れる頃にはゴミがあたりまえのように散乱していたり、また、島はバーベキューが禁止になっていますが、コンロが放置されたりしていることもあります。
また海に生きているウニなどを取って食べちゃったりする方も・・・(これは立派な犯罪です)
一部のジェットスキーは非常に海岸に近い場所まで来てシュノーケリングする人が危険に感じることもあります。
さらに沖ノ島の対岸一体は自衛隊基地になっています。このフェンスの向こう側へゴミを投げたり花火をあげたりして問題になることもありました。
そこで平成27年度館山市は館山の海水浴場におけるマナー向上条例を制定。
平成30年度より、沖ノ島海水浴場の条例適用範囲が拡大し変更。
館山の海水浴場における10のルール(禁止行為)
(1)ブイ,ロープなどで示された遊泳区域内にモーターボート,水上オートバイ,ヨット,サーフボード,ウィンドサーフィンなどを乗り入れることは遊泳者との接触など重大な事故につながる恐れがあるのでやめましょう。
(2)遊泳区域外でも遊泳区域を示すブイの付近でモーターボート,水上オートバイなどが高速航行を行うことにより「引き波」が生じることから、遊泳者に注意し最徐行しましょう。
(3)過度に飲酒した状態で遊泳することは危険ですのでやめましょう。
(4)皆さんが利用する遊泳区域内(海の中)にペットを入れることはやめましょう。(介助犬・盲導犬などは除く。)
(5)海岸の自然を保護するため、砂浜に車両等を駐車することはやめましょう。決められた場所でのモーターボート、水上オートバイの積み下ろしのための一時乗り入れは可能です。
(6)海水浴場では肌を露出した方が多く、やけどの恐れがあることから、バーベキューを禁止します。ホットプレートなどの電気調理器具も使用しないでください。
(7)入れ墨を露出しないでください。Tシャツやタオルなどで隠してください。
(8)飲食したゴミやたばこの吸い殻などを捨てることはやめましょう。
(9)もり,水中銃などの器具を携行し、又は使用することは危険ですのでやめましょう。
(10)海水浴場等の管理上支障がある行為(器物の破損、遊泳区域を示すロープなどへの船舶の係留、駐車場の複数区画の使用など)はやめましょう。
沖ノ島海水浴場も、このルールにのっとって運営されます。ぜひ、ルールとマナーを守って楽しんでください。
海水浴シーズンの土日、特にお盆期間は非常に混雑します。駐車場が朝のうちに一杯になり、沖ノ島に入ることもできずに引き返す車も見受けられます。早めの来島をおすすめします。
また、交通整理するための警備員も配置されていますが、歩行者も狭い場所をあるいています。車の通行には十分ご注意ください。
沖ノ島環境保全協力金制度について
2017年度から、沖ノ島では沖ノ島環境保全協力金制度が開始されました。
美しいこの島とその周辺地域を美しく守るために必要なお金を、主に海水浴期間中にご協力をお願いし、今後の環境保護活動にあてられることになっています。
海辺の鑑定団は、館山市よりこの沖ノ島環境保全協力金の集金業務の委託契約を締結しており、2021年度もひきづつきこの業務にあたる予定です。
お一人500円程度、もしくは車一台1000円程度を目安に集めさせていただいております。
集金場所は、沖ノ島ビジターセンター里海観光案内所と、沖ノ島護岸地域へ入る入り口である高ノ島付近となる予定です。
ぜひみなさまのご協力をお願いいたします。
バーベキュー、キャンプについて
駐車スペース及び護岸部分でのバーベキュー、テントの設営等は禁止となっています。
沖ノ島の中も火気は使用できません。
トイレとシャワーについて
沖ノ島には、トイレが二箇所あります。
一箇所は島の手前の護岸に環境保全協力金を活用して設置された簡易トイレ。もう一つは島内真ん中にあるあずまやと呼ばれる場所のあたりです。
夏季は、護岸側のトイレは増設されています。
また、シャワーについてですが、残念ながら水が来ていないのでありません。
ただ、海の家には設置されていますので、料金を支払えばご利用できます。(2021年度は、海の家がありません)
マナーについては下記も御覧ください
沖ノ島での釣りについて
海水浴シーズンで釣りをすることは危険なためできませんが、それ以外の時期でしたら可能です。特に沖ノ島へ至る護岸では釣り人をよく見かけます。
沖ノ島の島内でも投げ釣りが可能で、キスなどが狙えます。
釣りの場合も、マナーを守って楽しんでいただければと思います。
特に釣りのゴミは危険なものもあるため、必ずお持ち帰りいただけますようお願いします。
2020年の沖ノ島の閉鎖と解除について
新型コロナウイルス感染拡大の影響による緊急事態宣言以降2020年4月24日より、中に入ることができなかった館山市の沖ノ島周辺(高ノ島公園含む)が2020年10月1日(木)より閉鎖を解除し、入れることになりました。
感染症予防に努めた上で、私たちの沖ノ島の活動を再開いたします!
★2019年9月~10月の台風の影響
主に台風15号の影響により、島内に多くの倒木が発生しました。
現在は、地域消防団による倒木除去作業により、島内への立ち入りが可能となっています。
また、ボランティアによる海岸清掃により、流れ着いた流出物も無くなりきれいな砂浜になりました。
復旧作業に参加していただきました方々に感謝いたします。
しかし、未だ一部倒木は残されており、また、沖ノ島の森は大きなダメージを受けた状態です。
一部立入できない場所もあり、これまでの沖ノ島とは異なりますが、
その代わり自然の力を目の当たりにする貴重なフィールドとなっています。
そして、沖ノ島の森を復旧、再生させるには長い時間がかかります。
沖ノ島の森の再生活動に関しては随時当ホームページにてご案内いたします。