海の森再生活動を実践しています。海のゆりかごアマモ場再生の取り組み

海の森再生活動を実践しています。海のゆりかごアマモ場再生の取り組み

今、海の環境も様々な要因で変化しています。
私たちが取り組む沖ノ島周辺のアマモ場再生について、お話いたいます。

沖ノ島について

 東京から程近い館山湾の南側に位置する千葉県館山市の沖ノ島(沖ノ島公園)周辺の海は、暖かい黒潮の影響を強く受けてサンゴ生息の北限域となっています。
 海藻や海草(アマモ)によって形成される藻場を有し、多くの生き物の産卵・成育の場となっています。また、島の周囲1キロ程度の海辺にも多様な生き物が生息し、島内には海浜植物と照葉樹林とがつながり、島全体が豊かな生態系を有しています。
 沖ノ島は、将来にわたり「守り」「伝える」べき貴重な自然環境を備えた場所であり、地域の宝です。
それが少しずつ変化してきているのです。

アマモとは

アマモ

 アマモは、海に生える海草です。ワカメやコンブとは異なり、花が咲いて種が出来きる海で育つ雌雄同株の多年生の種子植物です。比較的静穏な海域の砂泥質の場所に群落を形成します。それをアマモ場といいます。
 アマモには、珪藻類や小型の海藻類が付着し、ヨコエビやワレカラ、小型の巻貝などが生活し、葉間にはアミ類などの小動物が生息しています。このため幼稚魚にとってアマモ場はそれらを摂餌(せつじ)する保育場となっているのです。また、葉と根から栄養塩を吸収し日中は酸素を放出する。放出された酸素によりバクテリアの有機分解が活発となり、水質浄化機能が高まります。さらにアオリイカやカミナリイカなどの産卵場ともなっています。
 昨今、地球温暖化に対する脱炭素社会の実現に向けての取り組みとして「ブルーカーボン」(山の森≒グリーンカーボンに対して海の森)としても世界からの注目を集めています。

ブルーカーボンとは(国土交通省のページへリンクします)

港湾:ブルーカーボンとは - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

海の中の環境の変化

 沖ノ島は、かつては、たくさんのアマモが生息していました。そのころは、アマモはあって「当たり前」でした。
 2004(平成16年)年3月発行の千葉県水産センター報告の「千葉県沿岸海域におけるアマモの分布」によると館山湾内には多くのアマモがあることが報告されていています。
このころは、館山湾には多くのアマモが生息し、東京湾でも有数のアマモ場があったのです。

「千葉県沿岸海域におけるアマモの分布」より

いつ頃からアマモが減少したのか

 私たちは、2004年から海辺の自然体験活動を皆様と楽しんでいます。アマモは、あって「当たり前」でした、ところが2014年の6月にある変化に気が付きました。

沖ノ島アマモ場の変遷

2008年の沖ノ島のアマモ場

2008年ころには、アマモばが形成

2011年浅瀬にもアマモ場があった

2011年5月の様子 アマモ場は浅瀬にもありました。

2013年7月のアマモ場

2013年7月のアマモ場の様子です。アマモ場があります。

2014年6月アマモが短くなった。

2014年の6月に、アマモが短くなっていることに気が付きました

2016年7月

2016年には、アマモ場はほとんどなくなっています。少し生えているものも短くなっていました。

アマモの食害と減少を確認したのは2014年の6月です。その間に何があったのでしょうか?

詳しい方に確かめると、これは「食害」(魚にたべられてる)と言われたのです。
あんなにたくさんあったのに…

原因はなんだったのでしょう

2013年7月撮影の写真では、普通にアマモ場が広がっています。2013年7月から2014年6月の間に何があったのでしょうか。

原因の一つは台風

気象データと状況を見ると2013年は、伊豆大島に大きな被害をもたらし房総半島にも接近している台風26号(大型 強い 10月15日~16日)の影響があり、砂の移動流出によるアマモへのダメージが大きな原因として考えられることがわかりました。

台風26号の軌跡

その後、沖ノ島のアマモは、残った地下茎からの発芽はあるものの「食害」(魚にたべられてる)のダメージの方が大きくなり、減少傾向を続けていると専門家からも指摘されました。

その後も大きな台風がいくつかやってきました。その台風も少なからず影響をしていると考えられます。

なんで食害(魚にたべられる)が起こったのか?

2008年のサンゴ 同じサンゴを2018年に撮影すると海藻が少なくなっていることが分かります。
2005年と2017年のサンゴイソギンチャク 周辺の海藻が無くなっています。

 いろいろと調べて他にも分かったこともあります。それはじわじわと海の中に起こっていたことかもしれません。それは「磯焼け」と呼ばれる現象です。「磯焼け」とは、海の中の海藻(ワカメ・カジメ・アラメなど)や海草(アマモなど)が極端に減ってしまい、海の中が砂漠のようになってしまう現象です。
 原因は、はっきりわかりませんが、それも、魚だけなくウニなどの食害や海水温の上昇などが推測されるそうです。

2016年からアマモの再生に取り組みを始めました

かつて、草原のようにあったアマモ場「海のゆりかご」再生を始めました。はじめは、今アマモが館山周辺にどのくらい生息しているのかを目視とスノーケリングでしらべました。

2016年の目視での比較では、全体的に減少傾向であることがわかりました。

ここは館山湾の別の場所 かつては一面のアマモ場でしたが、2016年には大分減少していました。その後ここからはアマモはほぼなくなってしまいました。

今までの沖ノ島のアマモ場再生活動の取り組み

2016年の調査からはじまり、アマモ場再生活動は今も継続しています。
私たちが取り組んでいるアマモ場再生は、大きく4つのサイクルで行っています。

サイクル①5-6月アマモの花枝を採集

アマモは、花が咲いて種ができる雌雄同株の多年生の草本(種子植物)です。花が咲くのは地域によって多少は異なるのですが、4月くらいからです。そして、それに実がつくのが5-6月ころです。そのころ花枝という種ができる部分を採集します。採集した花枝は、海水の中で熟成させます。

※アマモは、遠くに子孫を運ぶための増え方である種で増える方法、自分の分身を作って地下茎で増える方法と2種類の増え方をします。花枝の採集では自生しているアマモにはダメージは与えません。
※館山周辺のアマモの自生地は、かなり減少してしまいました。現在は内房エリアの別の場所の自生地の花枝を採集しています。

サイクル②9月ころ熟成した種を選別

 採集した花枝は、花枝自体は腐ってしまい、中の種が花枝養分を吸収して熟成。しっかりした種になります。このころその種を選別します。

サイクル③11月ころ種まき「苗床」つくり

 選別した種を、11月ころにプランターに種まきして、それを海水(水槽)に沈めて育成します。

※12月~翌年1月に発芽して、5月まで育苗します。
※育苗には、館山協同組合・お茶の水女子大学湾岸教育研究センターの協力をいただいています。

サイクル④そして1年後の5月に移植

 育苗した苗は、5月くらいになると40-50cmくらいまで成長します。そしてその苗を、沖ノ島の主にアマモ場がもともとあったエリアに100㎡から150㎡くらいのエリアに移植しています。
※沖合への移植は、沖ノ島ダイビングサービスマリンスノーさんのご協力により実施しています。

多くの皆様に協力いただいてます

 ①~④の活動は、連携・協力により実施しています。皆様のご協力も必要です。多くの皆様と海の変化や現状、そして海の未来につながる活動として、海の森の再生活動は継続したいと思います。

協力連携している皆様(順不同)

沖ノ島ダイビングサービスマリンスノー 館山漁業協同組合 お茶の水女子大学湾岸生物教育研究センター まるへい民宿 NPO法人海辺つくり研究会 館山市 地域の高校生の皆様 ほか多くの皆様の連携と協力で行っています。

記念撮影

沖ノ島のアマモ場再生の現状・活動の継続

2016年から、アマモ場再生を行っています。結果は。。
実は、なかなかうまくアマモ場再生につながりません。植えても食害(魚に食べられる)により、短くなって根付かないのが現状です。

森を守ることじは海を守ること

2019年に、令和元年房総半島台風がこの地を襲いました。その時沖ノ島の森は、目算約30%位の風倒木に見舞われました。
以降「50年後を見据えた森の再生活動」をNPO法人地球守の指導の下行っています。この活動は、森から海を守ることに繋がっています。

小さな工夫(くふう)をおこなっています

試行錯誤と、小さな工夫を行っアマモ場再生を行っています。
・アマモを食害から守るための、保護―ゾーンの設置も行いまいました。
・食害対象魚と思われる魚を少なくするための、天敵であるアオリイカの産卵床の設置
・食害に合わない季節11月の移植
・食害実態調査
・育苗促進実験 など

様々なノウハウを少しずつ蓄積しながら今後も、沖ノ島の森の再生活動とともに継続して実施していきたいと思ってます。

海の未来、地球の未来を考えるきっかけにもなると考えています。

この活動をご支援いただけないでしょうか?

 NPO法人たてやま・海辺の鑑定団ではこの自然環境の保全と啓発活動を続けるための寄付を募っています。この素晴らしい自然を未来のこどもたちへひきつぐためにご協力・ご支援いただけると嬉しいです。

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