2019年9月に沖ノ島の森に起きたこと
2019年9月5日に発生し、9月9日に房総半島に上陸した台風15号(令和元年房総半島台風)は千葉県を中心に各地に甚大な被害を及ぼしました。
館山市にある沖ノ島の森も一夜にしてその姿を大きく変えてしまいました。
それから私たちの「50年後の森」を見据えた活動が始まりました。
NPO法人 地球守の現状調査
台風により傷ついた森を再生するための専門的な知識をもつ方としてNPO法人地球守代表理事である高田宏臣さんに島の現状調査を依頼し、実際に沖ノ島で各所を仔細に見てまわっていただきました。
その結果、倒木が多く発生した原因として、台風が強大ではありましたが、島全体がもともと乾燥しており、土の中の環境が変わってしまっていたことが指摘されました。
倒木の原因は台風だけではなく岩盤の乾燥
なぜ岩盤の乾燥が進んでしまったのでしょうか?
これはコンクリートの道路や人工物などの影響によりかなりの時間の経過の中で起こります。
雨が降っても土中に染み込まずに地面の表面を流れてしまい、そのまま海へと流れ込むことになります。 土の中を空気と水が通らないことで岩盤の乾燥と崩壊がおき、さらに水脈が目詰まりを起こします。
これが理由で、海もまた荒廃していきます。
実際に海の中にも変化がおこっていた
数年前から海藻・海草が減少しており、現在「磯焼け」と呼ばれる状態となっています。
繁茂していた海草アマモが 勢いを失い魚の食害にあうなどして 減少してゆく
アラメ・ホンダワラなどの海藻も 次第に姿を消してゆき 磯焼けの状態に
沖ノ島の北側の海域において以前はアマモが広範囲に繁茂していましたが、現在はほとんどみることができません。
私たちは2016年から地球環境基金の助成を受け、沖ノ島のアマモ場再生に向け取り組みはじめ、アマモの種の採種から苗を育て植えて育てる活動を行っています。
森と海はつながっている!健全な海岸林と岩盤の様子
健全な海岸林では雨が降ると土中へと浸透し岩盤を潤します。
大小の団粒が形づくられたスポンジのような土の中を、水や空気が深いところまで行き来し、安定している状態で、そこでは高木から低木まで様々な種類の木が健康に生きており若い世代の木も育ってきます。
樹木根や菌糸を伝ってミネラルを多く含み浄化された水は岩盤でつながった海の底まで到達し、そこから海中に湧き出し、海藻や稚魚を育てます。
このように森と海はつながっており、森が健全になれば海もまた豊かな姿を取り戻すことができます。
沖ノ島の森は魚つき林だった
古くから漁師たちは海岸近くの森を「魚つき林」として大切にしてきました。それは森が豊かな海を作ることを知っていたからにほかなりません。
古来、漁業を営む地域では、海岸の森林を守る習慣があり、岬の岩場に成立する海岸性の森林や、湾内の離島の森林に神社を設け、立ち入りを制限するなど、一定の保護を行って来た場所がたくさんあった。これは、森林の木影には魚が集まる、とか、森によって風当たりが弱まる、など、いくつかの理由のもとに、この森林があるから魚が集まるのだということを認知していたものである。
wikipedia 魚つき林
まさに沖ノ島はこの通りであり、現在は地続きですがその昔は離島であり、その森の中には宇賀明神という神社が平安時代の1093年に建立されています。
磯焼けと呼ばれる海岸に海藻や海草が減少し、やがて生えなくなってしまう現象も、森林の荒廃による河川から流れ出る成分の変化や、水辺近くの森から土壌を伝って海へ湧き出す湧水の勢いが弱まっていることが原因かもしれません。
逆に言えば、森の力を取り戻すことができれば、海の恵みを取り戻すことも可能なのです。
健全な50年後の森と海のために
わたしたちは、50年後の森を見据え、これ以上悪くならないように好循環をうみだして、力強い自然の力で森が自ら回復できる手助けをします。
大切なことは「水」と「空気」流れを再生すること。
土の中の「水」「空気」の流れを再生し、土の中の菌糸を活発化させて、自然の再生の力を引き出していきます。
健全な大地は、雨が深くしみ込みます。
台風で倒れた倒木もすべて有効に利用します
NPO法人地球守代表高田さんのご指導のもと 自然のチカラを取り戻す手助けを マウンドと呼ばれる木や草で作った山
台風で倒れてしまった木々は、次世代の木を育てるためのエネルギーとしてすべて使います。
倒れてしまった木は、次の世代へつなぐための大切な栄養となります。
大きな倒木や長い木は 館山市消防団の皆様がチェーンソーで カットしてくださいます 倒木の整理 枝をうまく組み合わせてしがらみを作る 流れ着いた竹を利用します 竹炭は土壌改良に役立ちます 土壌改良にくん炭も使いますます 園路の脇から 水が染み込むように 宇賀明神のそば 雨の日での作業中 埋まっていた園路のコンクリートを壊して 石積みの壁に変身させました 園路脇の擬木は階段に変身 木や草、枝で作ったマウンド(山) 小さな山とその側に谷を作ります マウンドのメンテナンス 園路際の造作 園路の際 竹串活動 海辺の鑑定団スタッフや NPO法人地球守のみなさんや 地元の高校生や ボランティアの方など多くの方が参加してくださっています
さらに詳しく森の再生活動について知りたい方へ
私たちが沖ノ島で行っている森を再生するための活動の実際に行っている施しの具体的方法は、NPO法人地球守代表理事である高田宏臣さんが提唱する森の自然なチカラを取り戻すための自然の摂理や循環などに基づく考え方や作法により行っています。
高田さんの考え方や作法について学びたい方は海辺の鑑定団のyoutube動画をご覧いただくかNPO法人地球守のホームページを御覧ください。
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